REDWING (レッドウィング) 8075 1930s Sport Boot 1930sスポーツブーツ ブラックプレーリー
1920年あたりを境に、アメリカの実用靴にラバー製のソールが広く使われるようになり、ソールの機能性が格段に高まります。ラバーのソールを形成する際に、コードなどの素材を入れて底面を滑りにくくしたり、ソール底面に凹凸をつくりグリップを良くする、といった事ができるようになったのです。それ以前の主流ソール素材であるレザーでは得られなかった機能を加えられるようになり、アメリカのワーク、アウトドア用の靴は急速に進化を始めます。
ソールの機能の高まりと共に、20~30年代にはアッパーの新たなデザインも積極的に取り入れられるようになりました。エンジニアブーツのような新たなプルオンブーツや、ロガーブーツに見られるような独特のヒール、ラインマンにあるようなつま先あたりまで続くシューレースなどが1930年代に登場し、現在のワークブーツのデザインができ始めるのも、こうした流れの中でのことです。
現在、レッド・ウィングに不可欠なデザイン要素となっいるモックトゥも、この時代に取り入れられたディテールです。甲を上から吊り込んで底付けするグッドイヤーウエルト製法と、革を逆に底面から形成しバンプの上でU字型のパーツと縫い合わせて袋状にするインディアンモカシンの製法は本来、逆の発想から来る全く異なったものです。レッド・ウィング社が最初に作ったモカシンタイプの靴は、グッドイヤーウエルト製法にモカシンのつま先のT字型のステッチをデザイン要素として取り入れたもの、つまり「飾りモカ」でした。草原で野生動物を狩るインディアンのイメージからか、モックトゥは主にアウトドアタイプの靴に使われました。後年、ハンティングブーツとして開発されたアイリッシュセッターがモックトゥであったのも、この理由からでしょう。
新商品、1930s SportBoot(スポーツ・ブーツ)は、このレッド・ウィングがモックトゥを採用し始めた時代の、アウトドア志向の6インチブーツを下敷きにして開発されたものです。U型のステッチを配した飾りモカのアッパーは、レッド・ウィングで最も古くから使われているオーソドックスなラウンドトゥ用「8番ラスト」で吊り込まれています。当時のモックトゥはラウンドトゥ用のラストで吊り込まれていたのです。つま先は先芯を入れないフラットボックス仕様です。これも、当時のモックトゥの靴の仕様として一般的なものです。インディアンモカシンのように柔らかくて革の馴染みの良い、つまりは履きやすい事が、モックトゥが使われるアウトドア志向の靴にとって重要な要素だったのでしょう。ソールには当時、アメリカはもちろん世界でも最もグリップの良いラバー製靴底であったと思われる、グロコード「キングB」を使っています。
今回の新商品、1930sスポーツ・ブーツでは、他の部分にも、この時代のレッド・ウィングに存在したディテールを取り入れました。羽根先のデザインとカウンターステッチです。当時の一部のブーツに見られたRの大きな曲線的な羽根先、ヒールから羽根先につながるカウンターステッチです。
このように、1920~30年代当時の、つまりは80~90年近く前のレッド・ウィングをベースとしたブーツが、現代の感覚から見ても古臭く感じられない事は、アメリカの靴のデザインの多くがこの時代に完成され、それ以上変える必要のないものとなったことを物語っています。
レザーは茶芯のブラックレザー、ブラック・プレーリーとシガー・リタン。ブラック・プレーリーは、銀面に固い塗膜を乗せたもうひとつの茶芯レザー、ブラック・クロンダイクと違って、フルグレインのレザーに通常の顔料の塗膜を乗せた茶芯レザーです。ブラック・クロンダイクより柔らかい分、馴染みやすく、茶芯も比較的早めに出ます。シガー・リタンは、控えめな艶感を持つ正統的ブラウンのレザーです。オイルドレザーですが、オイルはやや少なめで張りのあるレザーとなっています。